STORY16.「飾らないフレンチシェフ」
フランス語も分からないままヨーロッパへ修行にでたという吉村さん。修行時代の話を多分「うゎ~!」という顔で聞いたのだろう。「考えられないでしょ!」と笑いかけられた。厳選した食材、和の素材も取り入れたお店は「お箸もあるから、気軽に食べに来てほしい。」と、手ごろな価格に設定しているとか。赤白のグラスワインが常時焼く60種、「ホテルに行ってワインリスト見せられただけで緊張するでしょ!僕のところで慣れてからそんな店に行くと良い。」と私たちを「嬉しい!」と思わせたあと、「それでもホテルは緊張すると思うけどね」と笑わせてくれた。
初めてお店を訪問したのは、ミル弁企画参戦のお願いに伺った時。その時は、「前向きに検討してみる!」との言葉を聞き、メンバー全員両手を挙げて喜んだ。しかし後日、「イベントが立て込んでいるので、商品開発する時間を作れそうにない。それにイベント当日もはずせない用事があって…、今回は参加できない」とのお返事が。一同、肩を落としてがっくり。それでも、フレンチのミル弁?!と期待を膨らませていたメンバーはどうしてもあきらめきれず、今度は大勢で再訪問。ランチが終わったお店に“ズラー”っと並び、『どうしても参戦して欲しいのです。お願いします!』とありったけの想いたけをぶつけてみた。そんな私たちの姿を見て、「まさか一度断ったのに、お店まで来るとは思わなかったよ。こんなに大勢で頭を下げられたら断れないよ~。」と、引き受けてくださった。後からお聞きすると、私たちの熱意(?)に押され仕方なく引き受けてしまったそうだ。
イベント約1ヶ月前、『どんなミル弁になりそうですか?』とお店を訪ねると、なんと、「お茶漬け」のミル弁が!!お弁当というと幕の内弁当みたいに、一品一品を食す形が主流。でも、ミル弁は味が混ざり合うため、そのバランスをとるのが難しく、想像されていたよりも開発のハードルは高かったそうだ。しかし、さすが一流フレンチシェフ。「ビビンバ」という発想から、混ぜても美味しいお弁当を追及したとのこと。さらに屋内で食べる事も想定し、手軽に食べられる「お茶漬け」の形が出来上がったそうだ。
そうして期待を胸に迎えた「お茶の京都博 へうげもの茶園inみかのはら」当日。販売開始と同時に「フレンチのシェフが作ったの?」「え?!お弁当なのにお茶漬け?これが食べてみたい!」と、お客さんが次々と吉村さんのお弁当を手に!あっという間に完売した。細部までシェフのアイデアとテクニックが光ったミル弁。食べた人の誰もが、普通の茶漬けとは全く違ったことに直ぐに気づいたことだろう。 生産者が見えない時代になり、アトピーなども増えたように思われる今日。だからこそ生産地を訪ね、食材を厳選するという吉村さん。そんなシェフが今一番はまっているのは”高知県のしょうが”だとか。お客さんのことを常に考え計算されつくした料理とは裏腹に、気取らないシェフが待つこの店。ミル弁を食べ逃したそこのあなた、ぜひ一度お店に足を運んでみてはいかがでしょうか。