STORY 3.「美抹茶どら焼きの奇跡(軌跡)」
宇治や静岡にだって負けていない。実は、「お茶」との関係がとても深い木津川市。あまり知られてはいないが、木津川市は昔からお茶の集積地だ。各地の茶葉を加工する問屋が集まる『茶問屋街』といったものが存在する。そこで、多くの優れた茶師の手で美味しく加工されたお茶は、全国のお店を通してみなさんの元へ一年中届けられる。そんな他の地域にはない木津川市の『茶の魅力』をどうしたら発信できるのだろう?メンバーで真剣に話し合った。今年は偶然にも『お茶の京都博』がある、そこでインパクトのある商品を発信しよう。決定したアイデアは、茶師厳選の抹茶を使用したお菓子、「大きな大きな抹茶どら焼き」だった。
しかし、そんな無理難題を引き受けてくださる方は誰だ?木津川市の和菓子と言えば、餡子が最高に美味しい、一級和菓子職人がいる『植田長盛堂』さんしかない。もちろん抹茶にもこだわりたい。「茶仕上げ日本一」の称号を獲得した茶師がいる『マルリ大谷茶園』さんだ。その時、お二人は全く面識がなか ったのに、早速企画を持ち込んだ。「木津川市の魅力を伝えるお菓子を一緒に作ってもらえませんか?」どちらの店も交渉はゆうに一時間を越えたが、私たちの真剣な想いを受け止め、色んなアドバイスをくださった。私たちも一から抹茶について勉強もした。そうして、高級抹茶を皮や餡に贅沢に使用する直径20 センチを超えたサイズ「大どら焼き」を目指すことに決定。木津川市の一級同士が繋がった瞬間だ。
夏休みに入り試作を敢行し、自分達のイメージにあう味を追求。どんなお茶をどの程度入れると良いか?風味は?試行錯誤を繰り返し、何度も試食をかさねた。抹茶の量が決定すると今度はサイズへの挑戦だった。温めた鉄板に25cm の生地が広がる、片面が焼きあがれば“ここが腕の見せどころ!”と、いつもは優しい植田さんの表情が一変、この時ばかりは厳しい顔つきになった。「さぁ~、ひっくり返すぞ。」固唾をのんでみんなで見守る。しかし…、「きれいに中まで焼き上げるには20cm が限界やなぁ」。一級和菓子職人をもってしても難しいのか…。それでも諦めきれない私たち、「味は最高です。でも、もっともっとインパクトを出したいんです。」本番まで限界に挑戦してほしい、そうわがままな想いを伝えた。この日、私たちは必ず完成すると信じ、商品名を「美味茶どらやき ~ぼく、でかやき~」と命名した。 迎えた 10 月の商品発表会、届いた商品は 25cm に達していた!!迫力あるどら焼きには、焼印で私たちのプロジェクトの印、「きづのもり」があしらわれたオリジナルだ。最後まで挑戦して下さった植田さんの想い、あとはそれを多くの人届けるだけだった。ついに「お茶の京都博」当日がきた。買いに来られたお客さんは皆「でかやき」に興味津々。中には顔の横に並べ写真を撮る人も。あっという間にお昼までに完売した。
後日お店に伺うと、反響に応えお店で継続販売してくださるとのこと(でか焼きは受注販売)。驚きと喜びを隠しきれない、きづのもりメンバー。企画が走りだした当初から、いつも笑顔でプロとしての技を見せ続けてくださったお二人。「美抹茶どらやき」は、本物の中の本物、プロの職人技と優しさがつまった味だ。ぜひ一度足を運び、自分の目で舌でお確かめください。