STORY.9 「ここでしか味わえないものを」
『ここかな?』そんな風に一歩建物に入るとお店だと分かる「リストランテ ナカモト」。イタリア、NY、東京で修行したオーナーシェフの仲本さん。『ここでしか味わえないもの』を提供したいとコース料理はおまかせのみ。1日2回手打ちするフレッシュパスタがお店自慢の逸品。選び抜かれた食器、料理に合わせたワイン…、全てが整ったくつろげる空間には、記念日で利用される方も多く、「おめでとう」という言葉がいつもどこからか聞こえてくる。そんな店の日常も、お客様にとっては特別な1日。『記憶に残る日にしてもらいたい。』毎日がプロデュースの連続と語るシェフに「プロポーズの時は…、」と言うと、強面のお顔に初めて笑みが!今は、まだ、学生には少し敷居が高いお店だが、私たちにも手が届く値段の「肉巻きおにぎり」を、これまで数多くのイベントでいただいてきた。もちろん、お店で出される逸品とは違うだろう。けれど、イベントのためだけに売られるこの商品、たくさんの人に食べてもらいたいと、いつも丁寧に焼かれている姿を目にしてきた。だから、昨年度、木津の魅力を詰め込んだツアーを実施した際も、「お土産企画」にご協力してくださいと頼み込み、聞きいれていただいた過去がある。
だから、今回もぜひ、参戦してほしいと、7月、企画を持ち込んだ。高級イタリアン店が、ミル弁なんて作ってくれるのだろうか…、ドキドキしながらの交渉だった。しかし、“木津川市産の野菜”を広めたいというメンバーの想いを受け止め、お店としても個人としても全面協力したいとすぐに承諾のお返事が!『今は木津川市が一体となってまちを盛り上げることはできていない。ミル弁グランプリを10年後も続く「木津の名物」にしていけたらとてもいいよね』。そんな嬉しいお言葉までいただいき、メンバー一同、身が引き締まる思いだった。
リストランテ・ナカモトさんのミルフィーユ弁当、いったいどんな風に仕上がるのだろう…。期待に胸がふくらむ中、ついに、待ちに待った取材日がきた。リスナカさんの“ミル弁”はまるでコース料理のようだった。イタリアンの技がいきる「グリル野菜」を一番上に。野菜は市内の農家さん、浦辻さんが丹精込めてつくられたものをはじめ、木津川市産の野菜がたっぷり!それを上から順に食べ進むと、シェフのお母さまが営む「仲本食堂」の人気メニュー“ぎょうざ”が飛び出す!「よかったら食べてみて。」といただいたミル弁は、大学に戻ってから奪い合いになった。それは、言うまでも無く、もちろん「お茶の京都博 ~へうげもの茶宴~ 」当日も大好評となった。
これを書くと怒られるかもしれないが…、『最初から料理人を目指していた訳ではないよ。』と言われた時は正直驚いた。お店がある今の場所は、元はご両親が「仲本食堂」を営まれていた。(現在、仲本食堂は再開され、リストランテ ナカモトさんから1筋東に入った所で再開されている。)。夕飯をメニューから選ぶこともあった幼い頃、普通の食卓というものに憧れていたそうで、実は“とりあえず”入った料理学校だったようだ。しかしイタリアに渡り、色んなことを“もっと知りたい”と葛藤する中、次第に『料理にのめり込んでいった』と話してくださった。『今でも悩みが尽きることはないよ』と心の内まで語ってくださった。今回、その仲本食堂の人気メニュー“ぎょうざ”を重ねてこられたのは、もしかしたら、ご家族へ、そこに集った木津川市の皆さんへの感謝の気持ちを伝えたくて…、そして、これから社会へ飛び出そうとしている私たちへのメッセージだったのかもしれない。いつの日か、人生の記念日にぜひ訪れたいお店だ。